中島 敦の南洋物 (1994/9/6)

岩波文庫より出た中島 敦の「李陵・山月記」は,以前から持っているような気がしたので,改版ものかと思い手に入れるのが遅くなってしまいました。

この作品集の中で初めて読み面白いと思ったのは,南洋物である小品集「環礁」です。中島の作品に南洋物があるのは,昭和16年より南洋庁の国語編修書記となり,パラオ島にいった経験があるためで,作品の舞台も日本統治下のミクロネシアが中心となっています。

十数年間子供が生まれなかった島で,神のように育てられているただ一人の女の子と老人ばかりとなった島の悲しい姿(寂しい島)。内地の男が好きな現地の女性とのすれ違い(夾竹桃の家の女)。ナポレオンと呼ばれる不思議な悪童(ナポレオン)などなど。小説というより,印象記といった風ですが,南方の暑い風とは裏腹に,中島の筆は淡々としていて,寂しくひんやりとした心持ちがします。その気分は,当時の日本人と現地人とのクールなかかわりかたによるのかもしれません。

☆文庫本で読める中島 敦 (1997.9)☆

山月記・李陵 他九篇岩波書店
李陵社会思想社
山月記・李陵集英社
中島敦全集筑摩書房
李陵・山月記新潮社
李陵・山月記・弟子・名人伝角川書店