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ミステリー事始め−コリンズ短篇集(1998/1/16)
しかし,T.S.エリオットが「月長石」を「最も早く書かれた,最も長い,最も優れた探偵小説」と語った通り,ポウとならぶ探偵小説,推理小説の創始者として,近年再評価がすすみ,作品とともに,その少々風変わりな生涯も明らかになってきた。 岩波文庫でも「月長石」はまだだが,最近「白衣の女」に続き,短篇集「夢の女・恐怖のベッド」が収録された。 ミステリーとはいっても,コリンズの作品は,単に変わったトリックや,おどろおどろしい描写で恐怖感を煽るものではなく,舞台設定の巧さと,スムーズな筆運びで読み手を飽きさせない。 この短篇集には。クラッシックではあるが,謎解きを主眼としたもの(盗まれた手紙,恐怖のベッド),荒野の一軒家での少女の冒険譚 (黒い小屋),ユーモア溢れる書簡体で書かれた最初の推理小説(探偵志願),財産争いから凶人に仕立てられた男の苦しみ(狂気の結婚)など,バラエティーに富んだ作品が収められていて楽しめる。 岩波文庫には他に「夢の女」と題する作品がある。永井荷風の数多い作品の中でもお薦めの一品だが,女はすべからくミステリアスなもの....ということで,強引に結びつけておこう....。 ☆白衣の女(コリンズ)岩波文庫☆ 暑熱去らぬ夏の夜道,「ロンドンに行きたい」と声をかけてきた白ずくめの女。絵画教師ハートライトは奇妙な予感に震えた。発表と同時に一大ブームを巻き起こし社会現象にまでなったこの作品により,豊饒な英国ミステリの伝統が第一歩を踏み出した。ウィルキー・コリンズ(1824−89)の名を不朽のものにした傑作。 ★夢の女(永井荷風)岩波文庫★ 身は茫然と,何か分らぬ冷たい夢の中を彷徨っているような心持であった―貧しい家族のため,女中奉公から商人の妾,娼妓,待合の女将へと,つぎつぎに変貌をとげる元藩士の娘お浪。境遇に翻弄されながら,新時代の波間を必死に浮きただよう日蔭の花のあわれさを,にごりのない抒情性をたたえた文体で照らし出す。 |